『おもいだすまでまっていて』を思い出すと、いろんな景色が浮かんできます。

新幹線で食べた崎陽軒のシュウマイ、浅草のホテルの窓から見たスカイツリーと顔に当たった夜風、広島の小さな島に佇む民家とヤギのハツコ、波の音、潮の匂い。

稽古場や人生初の北海道より自分に残るお話のなかの景色というのは不思議ですが、ふんわりした皮を被りつつ実はとっても生々しい脚本を書かれた山下さんの筆力と、そんな家族の生々しさを体現してくれた内藤さん&パジャマさんの熱量が、家族の記憶を本物として信じさせてくれたのだと思います。

今回、私の心の姉貴(おこがましくてすみません…)川口さんがエイ子役を演じられることとなり、新たな家族の姿がとても楽しみです。

三人芝居で広島弁というプレッシャーを胃痛とともに思い出しつつ、豊かで楽しい旅になるよう、東京から全力で応援しています。

 

 新井雛子

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おもいだすまでまっていて のおもいで

Pitymanの『おもいだすまでまっていて』は自分が主催する(小さな)演劇祭、弦巻楽団秋の大文化祭!で上演してもらった。旧知の間柄である山下由さんの作劇は端正でとても魅力的だったので、ぜひこれを札幌の観客に見てもらいたい、そうずっと熱望していた。2021年、その願いを山下くんはじめチームの皆さんは温かく受け入れてくれて、潤沢な用意もない札幌で上演をしてくれた。

舞台上にはツアー最小限の小道具。そして僕たちが用意した家具と舞台。つまり、ほとんどが札幌でかき集めた演劇祭用のものであって、Pitymanのために準備されたものではない。けれど、場当たりとリハーサルが始まった瞬間から舞台はPitymanの世界になった。山下くんの書いた決して口数の多くない脚本。それを的確に、繊細に表現する役者陣。小さな声と大きな声が共存し、人間の事件にはならないささやかな感情を掬い上げる物語。素晴らしかった。

あらすじを読んでみてもらうと分かるが、どうとでも“持っていける”物語である。ハイパーなコメディにも、寡黙な日常系にも、ダークな側面にフォーカスしても問題ない設定や筋描きである。劇評だってその方が書きやすい(きっと)。

だが『おもいだすまでまっていて』は、Pitymanはそうはならない。

それがこの作品への愛着を強くさせる点である。

事件にはならないささやかな物語。みんなが日頃目を向けないような、取り立てて言葉にすることがないような、一週間もすれば忘れてしまいそうな出来事。忘れないと明日を迎えられないような日々の些事。

でもその時間を舞台で目の当たりにすると、愛しさで胸が潰れそうになる。

おもいだすまでまっていて。

 弦巻啓太(弦巻楽団代表)

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Piymanの舞台が大好きだ。北海道に移住直後コロナ禍に見舞われてからは、なかなか東京に観劇に行くのが難しくなっていたのだが、本作は202111月、札幌で公演された。地元で観ることができた、思い出深い作品だ。

本作は家族の記憶にまつわる物語である。「家族っていったいなんなんだろう」と、本作を観て改めて考えた。ただ血がつながっているだけで、死ぬまで縁が切れないのか。いや、そうではない。共にした記憶の蓄積、互いへの赦しや情があって、初めて「家族」という実感を得る。本作はそれを、ある家族の姿を通じて感じられる。全体を貫く広島弁の響きの強さと、その奥に潜むやさしさが印象に残った。東京・浅草を観光する三人の会話劇は、本作の見どころのひとつでもある。再演の地は東京・広島、まさにこの作品にまつわる地だ。私が札幌で観たときとは、また違った味わいになるに違いない。「家族」を解像度高く、生々しく、それでいてあたたかな解釈で描いた本作が、より多くの人に届くことを願っている。

 

宿木雪樹

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はじめてPitymamの舞台を観たのは、何年前でしょうか?あさくさ劇亭でみた公演です。狭い空間なのに、すごく広ーい空間(外みたいなとこ)でやっておられたように自分の記憶は塗り替えられております。

まだPitymanの公演は2回しか観たことがないのですが、なんだか自分の生活と地続きな感じで、

喫茶店で知らない人たちの会話をこっそり聞いてるような面白みを感じます。観に行くのが楽しみです。

 

俳優 川上友里

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内藤ゆきってこんなたくさんの台詞を早口で話すのか。という驚きの公演でした。私の知ってる内藤ゆきはあんなに話しません。まあ役を演じているのですから本人のパーソナリティと違うのは当たり前なんですけど。そもそも初めて内藤ゆきが演じるのを見たのがこの公演です。初めて見た内藤ゆきが、ゴリゴリの広島弁で喋り倒す役だったから、いやまあ驚いたという、そういう話です。これを見たことがきっかけで内藤ゆきには劇団公演に俳優としても参加してもらうようになりました。子供向けのショーでした。でもその時はこんな広島弁で喋り倒すようなことはなかったです。そりゃそういう役じゃないんだから当たり前なんですけど。とにかくそれくらい印象に残りました。口数の多い家族旅行の風景。つい一緒にイライラしながら、しかし懐かしさの漂う、良い観劇でした。再演おめでとうございます。

阿佐ヶ谷スパイダース 長塚圭史

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